modest violet

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開発者としてのあれこれや、日々の雑記など

your future hasn't written yet. no one's has.
by Emmett Lathrop "Doc" Brown

「なれるSE」を読んで擬似ブラックを体験しよう

「なれるSE」というライトノベルがあります。ライトノベルながら、SE業界の暗雲を上手く表現していたりするので、Kindleセールがあった時にまとめ買いして空き時間にさらっと読んだりします。

平凡な社会人一年生、桜坂工兵は厳しい就職活動を経て、とあるシステム開発会社に就職した。そんな彼の教育係についた室見立華は、どう見ても十代にしか見えないスーパーワーカホリック娘で!?多忙かつまったく優しくない彼女のもと、時に厳しく指導され、時に放置プレイされながら奮闘する工兵。さらには、現場を無視して受注してくる社長のおかげで、いきなり実際の仕事を担当させられることになり―。システムエンジニアの過酷な実態をコミカルに描くスラップスティック・ストーリー、登場。

"経験豊富"な新人

 主人公の桜坂工兵くんの成長物語と言ってしまえば聞こえが良いですが、要は振り回されるお話です。特段、システムに詳しい訳でもありません。末端のシステム会社の悲哀を上手く表現していると感じます。作中でも新人なのにプロジェクトリーダーを任命されたり、結構なブラック企業っぷりです。でも、現実の業界でも「あるある」ですからね。何度か、そういう人を紹介された側としては本当に困る訳です。まず新人なので、様々な所の勘所が働かない。地味に困ります。プログラムを組むとか、そういう類は頑張れば新人でもなんとかこなせる領域なんです。(それでも死にかけるとは思いますが・・・)でも、プロジェクトを推進すると言う事は、間にある暗黙知を上手く抜き出して、具現化して(時にはスッと葬って)リリースにこじつけないといけません。やはりそこには経験がモノを言う場面が数多くある訳です。経験が無い新人はどうなるのか・・・?考えただけで悲惨ですね。阿鼻叫喚とはこういう事なのか、と。そんなお話がコミカルに書かれているのは、凄いと感心します。

他人事ではない恐怖

 何冊かシリーズが発売されていますが、個人的には一番ゾッとしたのは7巻の「目からウロコの?客先常駐術」です。大手の案件って怖いんですよね。大手のほうがコンプライアンスとかしっかりしてそうなイメージは強いんですけど、そうでも無い所も多い訳で。
 僕自身も過去に何度か、リリース作業を含めて数日〜数週間の出張対応とかしてましたけど、出張って言葉にいい思い出が何一つ無い・・・。よく出張に行ったら「地元の美味しい料理を食べました!」とか「有名なドコドコに行きました!」とか聞きますが、そんなの夢物語だと思ってました。出張って、出張先に強制監禁される事かなって思うくらいに僕の過去の記憶も暗いです。だってリリースで行った矢先に、仕様が違っていて(変わって!)その場で作り直しさせられる羽目になったりとか、ね・・・。一番悲惨だったのは、工事中の事務所で、真横で工事が行われる中、お客さんが間違えて発注した機械に合うように根本的な部分から作り直しをした事かな。あれは冬で寒かった・・・。
 そんな仕様変更とか契約どうこうでなんとかなるでしょ〜とか思うんですけど、大手の場合って間に人がいっぱい絡んでいるので「それは私の領域ではない」とかスパンっと切られちゃう。でも目の前の仕事はその人の領域だから「なんとかしろ!」と圧がかかる。社内の上司もお得意様を無くすわけには行かないので、「とりあえず交渉はするから、ひとまず現場は対応して!」という決断になります。いいんですよ、歩兵はただ動くのみです。ああ、世知辛い・・・。

嘘みたい、でも限りなく近い

 という風に、過去に暗い案件を体験している方には当時の思い出が読みがってくる素敵な読み物だと思います。そんなの体験した事がない人には、嘘みたいな話に思える内容でしょうが、限りなく近い業界絵図だと思います。ただ、実際の現場にはこんな超人的なマネージャーやエンジニアはほとんどいません。皆さん、普通の方たちで頑張って生き抜いているわけです。雨読晴耕。雨が多い時期ですので、怖いもの見たさで手にとってみては如何でしょうか・・・。